コラム

離婚届の不受理申出──無断提出を防ぐ手続

2026.10.05

【結論】

相手が勝手に離婚届を出すおそれがあるときは,離婚届の不受理申出をしてください。市区町村の窓口に本人が出向いて申し出れば,取り下げるまで期限なく効力が続きます。費用もかかりません。別居や離婚協議を始める時点で,あわせて済ませておくべき手続です。

【制度の内容】

不受理申出は,戸籍法27条の2第3項に基づく制度です。申出をした本人が窓口に出頭したことを確認できない限り,市区町村長はその届出を受理することができません。

対象となるのは,婚姻届・離婚届・養子縁組届・養子離縁届・認知届の5種類です。いずれも当事者の意思に基づいて届け出るものだからです。

他方,裁判離婚・調停離婚のように裁判所の手続を経た届出は対象外です。判決や調停調書に基づく届出は,不受理申出があっても受理されます。「申出をしておけば離婚されない」わけではない点に注意が必要です。

【手続の具体的な進め方】

申出先は,原則として本籍地の市区町村長です。本籍地以外の市区町村でも受け付けられ,本籍地へ送付される取扱いとなっています。

申出は本人が窓口に出頭して行い,運転免許証やマイナンバーカードなど顔写真付きの本人確認書類の提示を求められます。性質上,代理人による申出は原則として認められません。

効力は,本人が取り下げるまで続きます。取下げも同じく本人が出頭して行う必要があるため,相手方が勝手に取り下げることはできません。

離婚を成立させる段階になったら,取下げが必要かどうかを事前に窓口に確認してください。申出をした本人が自ら離婚届を持参すれば受理される運用ですが,自治体ごとの取扱いを確認しておくと確実です。

【すでに提出されてしまった場合】

離婚届が受理されてしまっても,離婚意思を欠く届出は無効です。もっとも,戸籍の記載を直すには手続が必要です。

協議離婚無効確認は人事訴訟の対象であり,調停前置が妥当します(家事事件手続法257条1項)。まず家庭裁判所に協議離婚無効確認の調停を申し立て,当事者間に争いがなければ合意に相当する審判(同法277条)によって解決し,争いがあれば人事訴訟に移行します。確定後,戸籍法116条により戸籍の訂正を申請します。

実務で問題になりやすいのが追認です。無断提出を知りながら,離婚を前提とした行動(新戸籍での各種手続や離婚後の給付の受領など)を続けていると,追認があったと評価されるおそれがあります。発覚後の行動は慎重に決めてください。

【2026年4月施行の改正との関係】

2026年4月1日施行の改正民法により,協議離婚でも父母の双方を親権者と定めることができるようになりました。もっとも,親権者の定めがない離婚届が受理されない点は変わりません(民法765条1項)。

したがって,親権について合意がないまま提出された届書は,形式面で受理されない場合があります。しかし,相手方が一方的に自分を親権者と記載して提出することは依然として可能です。親権が争点になっている事案ほど,不受理申出の実益は大きいといえます。

【最後に】

不受理申出は数分で済む手続ですが,これを怠ったために離婚無効確認という重い手続を強いられる例が実際にあります。離婚を切り出された,あるいは切り出す予定があるという段階で,まず着手しておくことをおすすめします。

当事務所では,福岡を中心に,別居開始前の準備から離婚条件の交渉まで一貫してご相談をお受けしています。無断提出が疑われる場合の対応もあわせてご相談ください。