【結論──要件に該当すれば単独親権。勝負は資料の準備にある】
父母の一方が子を虐待するおそれがあると認められるとき、またはDVのおそれその他の事情により父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときは、家庭裁判所は単独親権としなければならないとされています。
これは裁判所の裁量ではありません。したがって争点は「要件に該当するか」に集約され、実務上の勝負は、該当することを示す資料をどれだけ揃えられるかにかかります。
【なぜ立証が難しいのか】
DVや虐待は、第三者のいない場所で起こります。相手方は事実を否認するか、「夫婦げんかの範囲だ」と評価を争います。
また、被害を受けた側が離婚を決意した時点では、既に何年も前の出来事になっていることも珍しくありません。「あったことは間違いないのに、それを示すものが何もない」という状態が、最も避けたい事態です。
【何を残しておくか】
医師の診断書、受傷部位の写真(日付の分かる形で)、警察・配偶者暴力相談支援センター・市区町村窓口への相談記録、保護命令の申立てや発令の記録、当時のメールやSNSのやり取り、録音。子については、保育園・学校・小児科が把握している事実も重要です。
個々の資料の強さよりも、時系列でつながっているかどうかが効きます。断片的な証拠でも、相談した日付と受診日が対応していれば、説明として格段に強くなります。
【身体的暴力だけが問題ではない】
「DVのおそれその他の事情により父母が共同して親権を行うことが困難」という要件は、身体的暴力に限られません。
生活費を渡さない、行動や交友関係を監視する、人格を否定する言動を繰り返すといった態様も、共同での意思決定を成り立たせなくする事情として主張の対象になります。相手方に住所を知られること自体が危険な事案では、その点も併せて主張する必要があります。
【並行して検討すべき手続】
親権の主張と並行して、保護命令、監護者の指定、子の引渡し、婚姻費用分担といった手続を、優先順位をつけて進めることになります。
順序を誤ると取り返しがつきません。安全の確保が最優先であり、離婚条件の交渉はその後です。別居の時期と方法、住民票の閲覧制限、子の転校の段取りまで含めて、着手前に組み立てておく必要があります。
【最後に】
この類型の事件は、初動で結論がほぼ決まります。すでに手元にある資料で何が言えるか、これから何を確保すべきかを、早い段階で整理してください。
離婚・男女問題のご相談は、福岡市中央区赤坂の北古賀・舛谷法律事務所へ。地下鉄赤坂駅から徒歩1分です。