【結論──日常のことは単独、重要事項は双方】
共同親権となっても、子に関するあらゆる事柄を一つずつ協議しなければならないわけではありません。民法824条の2は、親権の行使は父母が共同して行うことを原則としつつ、一方が単独で行使できる場合を定めています。
【単独で行使できる場合①──監護及び教育に関する日常の行為】
日々の食事や衣服、風邪での通院、習い事の送迎、学校からの連絡への対応といった日常的な事柄は、子と同居して現に監護している親が単独で判断できます。
この例外がなければ、共同親権は日常生活として成り立ちません。
【単独で行使できる場合②──急迫の事情があるとき】
子の利益のため急迫の事情があるときも、単独で行使できます。緊急の手術への同意、暴力や災害からの避難、差し迫った転校の必要などが典型です。
ここでいう急迫とは、他方の親の同意を待っていては子の利益が害される状態を指します。単に連絡が面倒である、返事が遅いといった事情では足りません。
【原則どおり双方の関与が必要な事柄】
進学先の決定、転居(居所の指定)、緊急性のない高額な医療行為、旅券の取得といった重要事項は、原則として双方の関与が必要です。
実務上の難所は、どこまでが日常の行為で、どこからが重要事項かが、条文だけでは一義的に決まらない点にあります。塾や部活動の選択、スマートフォンの所持、長期の旅行などは、家庭の事情によって評価が分かれ得ます。
【意見が割れたときの手当て】
父母の意見が一致しない場合、家庭裁判所が、その事項について親権を行う者を指定することができます。もっとも、申立てから判断が出るまでには相応の時間がかかり、入学手続の期限には間に合わないこともあります。
そこで離婚時の取決め書面では、①双方の協議を要する事項を具体的に列挙する、②連絡手段と回答期限を定める、③期限内に回答がないときの取扱いを決めておく、という三点をあらかじめ書き込んでおくことが有効です。
【単独で行った行為はどうなるか】
共同で行うべき事項を一方が単独で行った場合、その行為が直ちに無効になるとは限りません。相手方の取引安全との調整が必要になるためです。
もっとも、無断で行われた事実は、その後の親権者変更や監護に関する審判において、父母が共同して親権を行うことの困難さを基礎づける事情として評価され得ます。単独でできる範囲を正確に把握しておくことは、子の生活のためだけでなく、自らの立場を守るためにも重要です。
【最後に】
共同親権は、取決めの精度がそのまま離婚後の生活の安定に直結します。どこまでを日常の行為として扱うか、意見が割れたときにどう進めるかを、事案に即して具体化することが弁護士の仕事です。
離婚・男女問題のご相談は、福岡市中央区赤坂の北古賀・舛谷法律事務所へ。地下鉄赤坂駅から徒歩1分です。