コラム

離婚後に不貞が発覚した場合,慰謝料請求できる?

2019.11.01

そもそも,不貞慰謝料請求とは?

不貞慰謝料請求が,不法行為に基づく損害賠償請求として認められるのは,夫婦の一方Aが第三者Yと不貞行為をした場合,他方Xの,夫又は妻としての権利もしくは婚姻共同生活の平和の維持の権利・法益が侵害されることになり,その行為が違法性を帯びるからです(最判昭和54年3月30日民集33巻2号303頁)。

不貞行為は共同不法行為と理解されており,一方配偶者のみならず,不貞の相手方のみを被告とすることも,両方を被告とすることも可能です(最判平成6年11月24日判タ867号165頁)。

ただし,XとAの婚姻関係がその当時既に破綻していたときは,特段の事情がない限り,YはXに対して不法行為責任を負いません(最判平成8年3月26日民集50巻4号993頁)。もっとも,実務ではこれが認められることは稀で,減額事由として斟酌されることが多いです。

既に離婚しまっている場合

慰謝料請求の可否

離婚後に不貞行為が発覚した場合,慰謝料請求ができるのでしょうか。

一方配偶者との関係でいえば,婚姻期間中は貞操義務を負うので,婚姻中に不貞が発覚したとしても,貞操義務に違反していることに変わりはありません。また,不貞相手方との関係でも,夫又は妻としての権利もしくは婚姻共同生活の平和の維持の権利・法益が侵害したことに変わりはありません。

したがって,結論からいえば,慰謝料請求はできます。

離婚後に不貞が発覚し,不貞相手方に対する慰謝料請求を求めた事案で,それを認容した裁判例として,以下のようなものがあります。
東京地判平成28年2月18日

「原告と原告元夫の婚姻期間は約4年5か月であること,被告と原告元夫との本件不貞行為の期間は平成26年3月末頃から約1年にわたること,被告は交際当初から原告元夫に妻がいることを認識していたこと,平成26年6月頃,被告が原告元夫に対して離婚しないのであれば別れたいと伝えたところ,被告は原告元夫から暴力を振るわれるようになるなどして別れることができないまま関係が続き,原告元夫による本件暴力行為が原因で本件不貞行為が終了したこと,原告は離婚の際に原告元夫と被告が本件不貞行為をしていたことを知らなかったこと,離婚後,原告が子供二人を引き取り監護養育していること,原告は原告元夫に損害賠償を請求するつもりがないことが認められる。
上記認定事実その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,本件不貞行為により原告は一定程度の精神的苦痛を受けたものといえ,原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料額は70万円と認めるのが相当である。」

 

慰謝料の認容額

もっとも,離婚後に不貞が発覚した場合,慰謝料として認容される額が減額される可能性があるでしょう。

上述のとおり,婚姻関係が既に破綻している場合には慰謝料が減額されることが多く,不貞以外の原因で離婚した以上,既に婚姻関係が破綻していたものとして,斟酌される可能性があるからです。

したがって,請求する側としては,婚姻関係が破綻していなかったが離婚に応じざるをえなかったなどの事情を説得的に主張・立証していく必要があります。

 

一方配偶者との間で離婚協議書を作成している場合

なお,一方配偶者との間で離婚協議書を作成し,清算条項が入っている場合も多いかと思います。

この場合でも,慰謝料請求は認められます。離婚協議書作成の段階では不貞の事実を知らなかったのですから,請求の放棄とは認められないからです。

さいごに

慰謝料請求が認められるには,婚姻中に不貞があったことを主張・立証しなければなりません。また,消滅時効の問題もあります。

お困りのことがございましたら,お早めに,当事務所にご相談いただけたらと思います。