コラム

婚姻費用の計算と潜在的稼働能力について

2022.03.22

婚姻費用とは

 婚姻費用の概念については高額所得者の婚姻費用はどうやって計算する?のコラム、標準算定方式に基づく算出方法については新しい算定表では、養育費・婚姻費用がどのように増額したの?のコラムをご参照ください。

潜在的稼働能力とは

 それでは、専業主婦、無職の場合、無条件に、総収入は0円と判断されるのでしょうか。また、義務者が意図的に収入を下げた場合、収入はその下がった現状の収入が総収入として判断されるのでしょうか。

 働くことができるにもかかわらず働かない場合に、収入がないものと扱うのは公平の観点から相当ではありません。

 そこで、実務では、潜在的稼働能力という概念が用いられ、調整が図られております。

 潜在的稼働能力とは、大まかに「働いてお金を稼ぐことができる能力」のことを言います。

潜在的稼働能力の判断基準

 潜在的稼働能力は、母親の就労歴や健康状態、子の年齢やその健康状態などの諸般の事情を総合的に検討し、判断されます。

 潜在的稼働能力が問題となる場合として、以下の4つを例として紹介しつつ、解説します。

①子を監護している場合

子を監護しており、以下のような事情がある場合には、潜在的稼働能力がないと判断される傾向にあります。

・子の年齢がきわめて幼い年齢で、付きっきりで監護する必要がある

・保育園や幼稚園の受け入れが困難

・子を監護できる人が周りにいない

・子に持病がある

 なお、一般論としては、監護する子が1人で、その子の年齢が概ね3歳までは、潜在的稼働能力が否定されることが多いです。

 ただ、実務では、それだけでは潜在的稼働能力が無条件で否定されるということはなく、母親の就労歴や健康状態、子の健康状態、保育園や幼稚園の受け入れの有無等の事情を具体的に主張していく必要があります。

②病気を患っている場合

闘病している場合や医師から就労を制限されている場合で、働きたくても働けない状況にある場合は、潜在的稼働能力がないと判断されるケースが多いです。

このような場合は、証明資料(医師が作成した診断書等)を求められることがありますので、医師に発行してもらい、裁判所に提出しましょう。

③意図的に収入を下げた場合

婚姻費用を下げるため、転職等をして意図的に収入を減額した場合は、転職前と同程度の収入を得る潜在的稼働能力があったものと判断されます。

また、あえて低い収入に甘んじている場合には、現実の収入ではなく、本人の年齢、学歴、資格などの潜在的稼働能力から収入を算定し、そのうえで、婚姻費用が算出されます。

 ④専業主婦の場合

 結婚後、専業主婦を続けて特にキャリアや資格がない方であっても、少なくともパートとしての就労で収入を得ることはできると判断される傾向にあります。

 その場合、総収入としては年額120万円程度と認定されることが多いです。

最後に

 本コラムでは、婚姻費用の算出に、潜在的稼働能力が影響することについて説明しました。

 上述と似たようなケースであっても、お一人お一人の事情によって、婚姻費用の算出方法は異なってきます。お悩みの方は、一度弊所までご連絡いただけたらと思います。