コラム

民法改正に伴う売買契約書作成の留意点③(瑕疵担保)

2020.02.13

改正の内容

改正民法は,瑕疵担保責任の法的性質について,いわゆる債務不履行責任説によることを明確化し,その法的効果として追完請求権および代金減額請求権が新しく明文化されました(改正民法562条,563条)。また,「瑕疵」ではなく「種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」という要件に改められました(改正民法562条1項等)。

契約書作成の留意点

「瑕疵」から「契約不適合」への変更,契約内容の具体化

上記改正に応じて,「種類,品質又は数量に関して」との文言を追記することや「瑕疵」から「契約内容への不適合」へ修正することが考えられます。また,契約内容に適合するか否かの判断に際しては,契約書の記載内容等が重要な考慮要素の1つになることが想定されるため,可能な限り「種類」,「品質」,「数量」を特定し,それを契約書の文言として具体的に落とし込むことが望ましいでしょう。

追完方法等の選択権

買主としては,追完請求権の具体的な方法は買主が選択できることや,その選択の際には複数の両立し得る方法を選択することが可能であること,改正民法562条1項ただし書は適用されないことなどを規定することが考えられます。

売主としては,買主が複数の選択肢を有することにより不利益を被ることが想定されることも考えられるため,選択肢の範囲を限定的にすることが考えられます。

代金減額請求権(改正民法563条)の行使の可否

買主としては,代金減額請求権を行使する選択肢を残したいのであれば,同請求権を行使できることを規定することが考えられます。

売主としては,代金減額請求権の行使を望まない場合には,買主は代金減額請求権を含まない特定の方法に限られることなどを規定することが考えられます。

買主の責に帰すべき事由による不適合

改正民法は,買主の責めに帰すべき自由によって契約の不適合が生じた場合には,買主は,履行の追完および代金の減額請求をすることができないとしています(改正民法562条2項,563条3項)。

買主としては,買主に故意または重過失がある場合に限定するよう規定することが考えられます。売主としては,この規定が適用されることを明確化しておくため,明文化することが考えられます。

期間制限に関するルールの明確化

改正民法は,買主が担保責任の追及をしようとする場合には,契約内容との不適合を知った時から1年以内に売主に通知しなければならないとしています(改正民法566条)。なお,民法の改正に併せて,売買目的物に瑕疵等があることを発見した買主の通知義務などを定めた現行商法526条の規定も改正されました。買主としては,改正商法526条が適用されない旨の特約をもうけることが考えられます。